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それってつまりTSでBL…ってコト⁉「魔女と野獣」レビュー

3.0
魔女と野獣 ファンタジー
©佐竹幸典・講談社/「魔女と野獣」製作委員会
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評価 ★★★☆☆(48点) 全12話

TVアニメ『魔女と野獣』本PV

あらすじ はじまりは17人の「起源の魔女」。全ての力をその身に受け継いだものが、現代も世界各地に存在する。そこに現れたのは、棺桶を背負う男と、獣の目をした少女。引用- Wikipedia

それってつまりTSでBL…ってコト⁉

原作は月刊ヤングマガジンで連載中の漫画作品。
監督は浜名孝行、制作は横浜アニメーションラボ

魔女

タイトル通り、この作品は「魔女」が存在する世界だ。
そんな世界でとある街に「目付きの悪い」二人組が降り立つ。
一人はタバコを吸い、棺桶を背負ったオールバックの男、
もう一人は金髪ロングな少女だ。二人は「魔女」を探している。
二人がなぜ魔女を探しているのか、魔女とはなんなのか。

物語の始まり、導入をきちんと丁寧に描きつつ、
癖のある二人の主人公の印象がつく。
特に金髪ロングの美少女「ギド」は黙っていれば美少女なのだが、
魔女のことになると一気に目つきが悪くなり、少女とは思えないほど
下品な言動も多く、魔女と見るやいなや殴りかかる始末だ。

この世界において「魔女」は不幸を呼ぶ存在と言われている。
だが、二人が訪れた街では魔女は崇拝されている。
魔女は街の住民に慕われている一方で、彼女は何かを隠している。
魔女を慕った少女たちは四肢を切断され生贄にされてしまう。

ゴシックな世界とリズムカルな音楽で彩られた
重厚な世界が、この作品だからこその世界観を感じさせてくれる。

魔女は悪、全ての悪いことは魔女のせい。
そんな世界だったからこそ、魔女は人を恨み、
魔女は己のために、仲間や家族のために復讐しようとしている。

復讐

そんな魔女に対し、主人公である「ギド」も復讐を誓っている。
彼女は魔女の呪いを受けた存在だ、永遠の呪縛と言われた魔女の呪い、
解くためには呪いをかけた魔女の気まぐれか、王子様のキスしかないと言われている。

しかし、そんな呪いにはもう1つだけ解く方法がある。
「魔女との口づけ」だ。
敵である魔女とキスをすることで主人公は本来の身体に戻り、
魔女をも圧倒する存在として戦うことができる。

なぜ彼が魔女呪いを受けたのか、魔女の天敵と言われた主人公はなんなのか。
1話という導入で作品全体の謎をみている側にしっかりと
気にならせてくれる。

きちんと序盤の段階で二人の主人公を印象付けしつつ、
キャラを立たせ、世界観を見せる。お手本のような導入だ。
2話になるともうひとりの主人公である「アシャフ」もきちんと掘り下げられる。
この令和の時代に常に「タバコ」を蒸し続ける大人の男と、狂犬の「ギド」

魔響教団の魔術師であるアシャフは魔女を捕まえることを目的としており、
二人は同じ「魔女」を探している、同じ目的である凸凹なコンビ、
王道の組み合わせがたまらない。

魔女が起こす悲惨な事件、そんな事件を捜査しながら二人は魔女を探していく。
ド派手でわかりやすい最近の作品とは傾向が違うものの、
どこか懐かしい、15年くらい前の硬派な深夜アニメの雰囲気を感じさせる。

禁具

この世界には魔術を使う魔術師、魔導の頂点にいる魔女、
そして「禁具」が存在している。
魔導や魔術の知識がなくとも、禁具さえあれば魔法が使える、
だが、そこには代償が伴う。

魔女も人間も、己の欲望のために、己のために力を行使している。
魔導や魔術という力が人間を、魔女を溺れさせる。
魔導や魔術、禁具だけでも問題なのに
「死霊術」により死者も生き返る世界だ。

ハードボイルドなストーリーが1話1話しっかりと作られており、
派手さはないものの、どっしりと腰を据えたストーリーを描いている。
その分、メインとなるストーリーの進行は遅いものの、
丁寧に世界観を紐解きながら1つ1つの設定と、
キャラクターを見せている。

聖騎士団

二人の主人公が所属する組織である魔響教団は
魔女を捕獲し、連れ帰ることを目的としている。
一方で魔女に対処する組織として聖騎士団というものも存在しており、
彼らは魔女を「狩る」事を目的としている。

物語の中盤で、そんな聖騎士団に追われている魔女と出会うことで
物語は本格的に動き出す。
二人が出会ったのは誰も殺していない魔女だ。
一族の掟として「魔剣」を守り続けているだけに過ぎない。

それなのに聖騎士団の処刑人は彼女たちの一族を殺し、
彼女の命をも狙い、魔剣をも狙っている。
序盤から中盤まで出てくる魔女や禁具を使っているものは悪人だったが、
中盤からは魔響教団の魔女や、どこにも所属していない
誰も殺していない魔女も出てくる。

魔女はどうしてここまで忌避されるのか。
世界観を紐解きながら、徐々にその世界観の根底に
近づいていくような感覚だ。

ただ終盤になると「先週のCパート」部分をAパートでわずかに
描いてから続くを描くことも増えてくる、
1クールという尺を使い余しているような印象だ。

作画に関しても序盤は高いクォリティだったのだが、
中盤からは明らかに息切れをし始める。
1話以降、全然出てこなかったギドの封印解除の姿ではあるが、
9話でようやく再登場するものの、作画が悪くなってしまっている。

世界を滅ぼす魔剣、そんな魔剣よりも強い主人公であるギド、
ギドはどうしてそんな力を持っているのか、
ギドに呪いを与えた魔女はどこにいるのか。

そんな魔女と終盤、再会する。

永遠の魔女

ギドに呪いをかけたのは永遠の魔女と呼ばれる存在だ。
魔女の寿命は本来200年と運命づけられているが、
彼女はその名の通り、200年を超えて生き続けている。
まるで人形で遊ぶ少女のように、彼女はイドと遊んでいる。

この世界の魔女は「いむべき存在」として差別されている。
悪いことをしていないのに、なにか悪いことが起これば
魔女のせいにされる、実際、魔女が起こした問題も中にはあるものの、
それは人間であろうと魔女であろうと関係ない、
この世界では人間でさえ魔術を使える。

終盤はそんな世界での過去が描かれる。
二人の主人公がどう出会ったのか、
そんなエピソードではあるものの作画が悪すぎる。

特に「アシャフ」の作画に関しては中盤以降、
ちょこちょこと気になるシーンはあったのだが、
終盤になるとそれが顕著だ。
あまりに極端にくずれて笑ってしまいそうになる。
なまじアシャフがイケメンなキャラだけに崩れた際の顔が目立つ。

1クールでは二人の過去が描かれて俺達の戦いはこれからで
終わってしまうのもやや残念なところだった。

総評:時代を逆行する硬派アニメ

全体的に見て今時珍しい硬派なダークファンタジーアニメだ。
魔法が存在し、魔女が存在する世界で
呪いを受けた主人公と魔女を保護する二人の主人公が、
呪いをかけた魔女を探しながら旅をし続けている。

序盤はそんな世界観を紐解くように1話1話、
腰を据えた重厚なストーリーを描いており、
どこか懐かしくも、染み渡る。
タバコの煙とウィスキーが映えるようなアニメだ。

最近のアニメというよりは20年くらい前の
「Witch Hunter ROBIN」などを彷彿とさせる作品だ。
あの頃のアニメが好きな人にはたまらない魅力があるものの、
令和ゆえに1クールしか尺がないゆえに
序章で終わってしまっている。

いろいろな謎はほとんど明らかにならず、
俺達の戦いはこれからで終わってしまっているのは
本当に残念だ。

また作画に関しても中盤以降は明らかに息切れしており、
せっかく重厚な世界観で優秀なキャラデザな作品なだけに、
ときおり作画が崩れるのが辺に目立ってしまっていた。

2期があるかどうかはわからないが、あるならば見たいと
感じさせる魅力はある作品であり、
ダークファンタジーな世界が好きな人にはおすすめしたい作品だ。

個人的な感想:キス

これは私の邪推というか余談でしか無いのだが、
魔女の呪いを解除する条件は3つだ。

作中でも出てきた魔女にキスをすることで一時的に呪いを解除する方法、
そして残りの2つ、魔女の気まぐれか、
もしくは白馬の王子様の愛の口づけだ。

主人公に呪いをかけた魔女が終盤出てきたが、
彼女が気まぐれに呪いを解除しそうな雰囲気はない。
それだけに主人公の呪いを解除する方法は
白馬の王子様の愛の口づけだけだ。

3年前に出会った二人、ギドは人間としての感覚や
感情をろくに理解せず、野獣のような存在だった。
そんな彼に対し「アシャフ」は「愛」を教えようとしている。

ギドのもともとの肉体は男性だが、魔女の呪いによって
少女の肉体になっている。つまりはTSだ。
この作品は結果的にTSでかつ、BLな結末を迎えるのかもしれない(笑)

そんな要素は1クールでは殆ど出てこなかったが、
終盤のアシャフのギドに対するセリフや
設定を考えると、そう考察せざるえない…

邪推かもしれないが(笑)

なんにせよ、2期があるならば期待したいが、
もし2期がなくとも私のこの邪推が正しいかどうか、
原作が完結したらチェックしたいところだ。

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