評価 ★★★☆☆(58点) 全12話
あらすじ 深い深い、森の奥。一匹の火吹き竜が、魔法を操る猫たちと暮らしています。生まれる前に実親を失ったその竜は、偶然出会った一匹の母猫によって育てられました 引用- Wikipedia
猫は老いる、竜は生きる
原作は小説家になろうで連載していた短編小説。
監督はオ・ジング、制作はOLM Division 3
竜
この作品の特徴的なところは「小説家になろう」でありながら、
転生や転移といった要素がないところだ。
悪役令嬢なわけでも、ゲームの世界というわけでもない。
ファンタジー世界で描かれる物語だ。
身ごもった竜の卵が猫(ケットシー)の巣に落ち、
竜は猫とともに猫として成長していく。
ケットシーたちは魔法を使うものの、人間から狩られる側だ。
母猫は人間によって召喚魔法で彼らの前から消え去ってしまうものの、
猫と竜はたくましく成長していく。
だが、ある日、人間が猫を襲っているところを目撃してしまう。
しかも自然の世界の道理「弱肉強食」によって殺されるのではなく、
毛皮のために人間が猫を殺していると知り、彼は人間たちへと警告する。
人間たちにも猫に優しい人間は存在する。
人間たちとの交流の中で猫から竜の魔法が伝わり、
「猫と人間」の共存関係が生まれる。
どこかおとぎ話でも聞いているような物語だ。
そんな優しい物語が良い意味でなろう系らしさを薄れさせ、
染み渡るようにキャラクターと物語がじわじわとした面白さを感じさせてくれる。
爽快感があるわけでも、強いギャグがあるわけでも、萌えがあるわけでもない。
だが、心温まるストーリーが1話から描かれている。
猫
2話では召喚された母猫の視点で物語が描かれる。
魔法使いの学園に召喚され、未熟な魔法使いの少女の使い魔になった彼女は、
人間と交流しながら和やかな日常を過ごしている。
たまに息子のアークデーモンが出てきたりするが(笑)
母猫はカーバンクルを食べ続けた結果、魔獣化しており、
長い時を生き続けている。
その長い時間の中での変化、人間の成長が描かれる。
未熟だった魔法使いは立派な魔法使いになり、
そんな彼女の教え子がまた優秀な魔法使いになる。
1話完結で描かれる物語が染み渡り、
主人公がおらずとも物語が作品の中の「世界観」だけで完結している。
群像劇
猫と竜では寿命が違う。
兄弟たちはあっという間に成長し、家族を得ているものの、
彼には番はいない。彼のもとには多くの子孫が出産のために訪れる。
多くの子猫が巣立ち、そんな子猫の中には人間と交流を持つものも現れる。
最初は1匹、次の年は2匹、その次に4匹。
竜によって猫と人間の関係性が変わったからこその変化が、
世代を重ねるごとに生まれていく。
竜にとってはほんの数年、数十年にすぎない。
だが、猫や人間にとってそれは成長し、家族を作り、老いていく人生そのものだ。
主人公がほとんど変わらないからこそ、
周囲のキャラクターたちの時間の流れが際立っている。
時間が過ぎていく中での人間と猫の変化、この機微が常に温かく優しい。
1話では小さかった子供が、生まれたばかりの子猫が、
4話では王になり、立派な猫になっている。
1話完結の短編ではあるものの、その1話1話が短編ではなく、
「猫と竜」という長編の物語になっていく。
メインとして描かれない猫や人間も多い。
だが、そんなキャラクターたちでさえ、ちょっとしたシーンで
「成長」した姿を見せてくれる。
出番が少ないキャラも印象が深くなり、
多くのキャラクターに愛着を持てる。素晴らしい群像劇だ。
主人公の兄弟猫はとっくに亡くなっている。
だが、母猫は別だ。
再会
1話からおそらく10年は月日が経っている。
下手したら20年近い月日だ。
亡くなったと思った母、亡くなったと思った息子、
そんな二人が再会する。
この作品らしくノリ自体は軽い。変にお涙頂戴な演出にはせず、
さらっと中盤で再会させる展開は実にこの作品らしいシーンだ。
再会したおかげで母の日も祝えるような関係になる。
多くの月日が流れ「寿命」を迎えるものもいる。
一匹一匹、一人ひとりの人生が描かれ、
しっとりしたラストを迎える話もある。
1話1話が味わい深い。
1話のエピソードが舞台劇になるほどの月日が流れ、1クールが終わる。
永遠に続いてほしいと思うほど、
温かな日常が描かれた、染み渡る作品だった。
総評:染み渡る名作
全体的に見て、こういう作品が1クールに1本は欲しいと思う癒し枠だった。
竜と猫が出会い、猫と人との関係性が変わり、
長い月日の中でのそれぞれの変化、成長と死が描かれており、
どこかおとぎ話でも聞いているような温かい雰囲気に溢れている。
小説家になろうで連載していた作品だが、
そんななろう系らしさが一切なく、
逆に言えば、わかりやすい派手さがない地味な作品ではある。
そういう意味では人を選ぶ部分はあるものの、
深夜アニメではなく、朝や夕方など子ども向けとしても成立する作品だ。
これは猫と竜の日常アニメではなく、
長命な竜の目を通して何世代もの人生を眺める物語だ。
だからこそ、ぜひ2期をやってほしい作品の1つだ。
個人的な感想:群像劇
長い年月を生きる竜だからこその群像劇の描き方が特徴的であり、
この作品らしい面白さを感じられた作品だ。
1話だけではピンとこない部分もあったが、
2話、3話、4話と積み重なることで作品の魅力もにじみ出てくる。
こういう作品に出会うと「小説家になろう」原作だからと
食わず嫌いしてしまうのはもったいないと感じる作品だった。



