青春

「School Days」レビュー

青春

評価 ★★★☆☆(50点) 全12話

あらすじ 榊野学園高等学校へ通う伊藤誠は、以前から同じ通学電車に乗る桂言葉のことを気にかけていた。そ引用- Wikipedia

因果応報

原作は成人向けゲーム
監督は元永慶太郎、制作はティー・エヌ・ケー

キャラクターデザイン


画像引用元:School Days 1話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

本作品は2007年に放映された作品だ。
今から約13年前ということもあり、やや懐かしいキャラデザだ。
原作が成人向けゲームということがわかるような雰囲気を漂わせ、
「懐かしさ」すら感じる。

特に冒頭は主人公の「モノローグ」から始まる辺りも懐かしい。
普通の真面目な男性主人公に見える彼が、
冒頭から「電車で見かけた美少女」を「盗撮」するという
主人公の行動にはいささか疑問が残る点ではあるものの、
後の行動や台詞を考えれば盗撮など些細な問題かもしれない。

「好きな人の写真を待ち受けにして3週間、
 誰にもバレなければ恋が成就する」

そんな学生時代には1度は似たような噂を聞いたことのある噂を
主人公である「伊藤誠」はバカバカしいと思いつつも、
待ち受けにしていたところ隣の席の「西園寺世界」に見られてしまう。

授業中にノートの端で交わされる会話、おまじない、
気さくで情報通な友人、淡い恋心。
恋愛ゲーム原作の「青春アニメ」らしい物語の始まりは
ベタではあるものの、ある種の王道の面白さを匂わせる。

電車で見かけるだけだった美少女である「桂言葉」と、
「西園寺世界」の後ろ盾も有り「伊藤誠」は仲良くなっていく。
ベタとも王道とも言える物語の始まりは明るい反面で
1話の段階から不穏な空気を漂わせる。

知り合ったばかりなのにすぐ告白しようとする伊藤誠、
あっさりそんな告白を受け入れる桂言葉、
恋愛を後押ししたお礼として彼にキスをする西園寺世界。

1話の段階でこの作品が王道やベタとは違うストーリーであることを
しっかりと感じさせる。

イラッ


画像引用元:School Days 3話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

1話の段階でも「伊藤誠」という主人公にイラッとさせられてるが、
2話以降も彼の行動や台詞にイライラさせられる。
彼を演じている声優さんの素直な演技も相まって、
余計に彼の空気を読まない態度に見ているだけでストレスだ。

初デートで明らかに自分しか楽しんでおらず、
ムードもなにもない状況でキスをしようとしたり。
「欲望に忠実」「思春期の男子」らしいとも言えなくはないが、
見ているとヒロインたちがどうして彼を好きになったのかという
ラブコメの重要な部分がまるで理解できない。

「人の気持ち」というのを徹底的に読めない。
それが「伊藤誠」という主人公だ。今で言うサイコパス的な
ニュアンスすら感じる。自分が怒られると自分の過ちを認めず、
むしろ他人に責任をかぶせる。

当然、「言葉」との関係も徐々に気まずくなっていく。
女心がわからない思春期男子が自身の「欲望」と戦いつつ、
女子と向き合ってるような物語が序盤で描かれる。

すぐに振られてもおかしくない台詞や行動が多いのにも関わらず、
それを許しつつ、むしろ彼に一歩歩みを寄せる「言葉」は
ヒロインとして魅力的で可愛らしい。

しかし、そんな歩み寄りに対し彼はこう言い放つ
「なんか言葉の相手するのってつかれる」

最低である。


画像引用元:School Days 4話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

「伊藤誠」という主人公は性欲に忠実である。
4話ではキスをしながら胸をもみ、嫌悪感を示す言葉に対し
「頑張るって言ったじゃないか」と平然とした顔で言い放つ。
俺が悪かったと謝るものの、本心からは誤っていない。

なにせ彼は言葉の相手をするのは「疲れる」とこぼしている。
つまりは謝罪の言葉も本来は言いたくない、
むしろ素直に胸を揉ませろと心の奥底では思っている。
彼の部屋のゴミ箱はなぜかティッシュがいっぱいだ(笑)

「言葉」に問題がないと言えなくもない。
彼女は恋する乙女、「白馬の王子様」的なものを
夢見ているような清純な女の子だ。
「男」という性に対しての嫌悪感がある。

そこに付け入るのが「世界」というもうひとりのヒロインだ。
「恋の特訓」と称して練習相手になる。
世界は伊藤誠のどこがそんなにいいのかという大前提が気になるものの、
胸を触らせたりして彼の性欲を刺激することで籠絡していく。

彼の攻略方法としてはベストと言わざる得ないと同時に、
「西園寺世界」というヒロインの腹黒さをふつふつと感じさせる。
見ている側がどっしりとした腹黒さを彼女に感じているのに
「伊藤誠」という主人公はあっさり彼女に籠絡される。

どんどんと彼が人として「堕ちていく」様をみせられる。
恋人を裏切り、練習と称して西園寺世界との肉欲に溺れていく。
もはや朝だろうと夜だろうと道端だろうとお構いなしである。

そんなことは知らずに健気に彼を想う「言葉」の純な
行動や台詞に胸を締め付けられる。
彼女が想えば想うほど主人公は無視や無反応を決め込む。
人の心を理解する気がないのは中盤になっても相変わらずだ。

中盤の時点で心底「伊藤誠」という主人公が嫌いになる。
それなのになぜか二人のヒロインにもサブヒロインにも
好意を寄せられているのが厄介でしか無い。

選ばない選択肢


画像引用元:School Days 2話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

この作品の原作はアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは「主人公」の立場で物語を進めヒロインたちと仲良くなる。
その過程で「選択肢」が表示され、その選択肢によって
物語が変わり、キャラクターたちの好感度も変わっていく。

しかし、この作品の場合は原作における「選択肢」で
本来はプレイヤーがわざとでなければ、冗談でなければ選ばないような
1番選択してはいけない選択肢をあえて選んでいるような感覚だ。
好きな子に対する言葉や行動の選択や判断がすべて間違っている。

だからこそ見ている側はアニメにおける「伊藤誠」という
主人公に嫌悪感を感じてしまう。
なぜそんな事を言ってしまうんだ、なぜそんなことをしてしまうんだ。
お前は間違った選択肢を常に選んでいるといういらだちが募る。

彼が自ら破滅の道を進んでいるようにしか見えない。

壊れていく


画像引用元:School Days 7話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

徐々に彼らは壊れていく。
二人の関係性を知ってしまった言葉は連絡すら絶たれ、
誠との関係性を周囲に言ってしまったがゆえに女子からいじめを受け、
嘘や誤解、噂から周囲の人間も彼女を追い詰めていく。
そんな彼女を伊藤誠という主人公は何もフォローしない。

完璧に関係性をはっきりと断てばこじれることなどない。
だが、彼はそんなことはしない。時折、彼女たちに餌を与え、
答えをはっきりと出さず
ずるずると関係性を引きずらせ、女達に争わせる。泥沼だ。
清純だった言葉も自らの身体を餌にし、誘惑してくる始末だ。

一体彼のどこが良いのか考えてはいけない。
話が進むと、言葉と世界だけではなくサブヒロインたちも
彼に思いを寄せ、その想いが爆発していく。
あるものは口づけを、あるものは肉体関係を、
そして全てを受け入れる伊藤誠。

彼自身、自分が「最低だ」と自覚しているのが唯一の救いではあるものの
自覚しているのに変わろうとはしない。肉欲に溺れていく。
彼は性欲に忠実だ。据え膳食わぬは男の恥とばかりに、
目の前に女体がさらけ出されれば食らう。
女性の気持ちなど関係ない。むしろ女性の気持ちをめんどくさいと思う男だ

狂気


画像引用元:School Days 100話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

その裏で「言葉」は心も体も壊れていく。
襲われても何も感じず、だが、誠と別の女のキスには涙を流す。
心が壊れ、体も穢れ、彼女もまた堕ちていく。
「自分は誠の恋人である」という事にすがり、
それだけが彼女の心の支えになっていく。

周囲に何を言われても、周囲がいくら彼女を責めても
彼女は「誠の恋人である」という事実だけにすがる。
あやふやな態度ばかりを続ける誠、彼女をいじめるクラスメイト、
彼女を襲った誠の友人、西園寺世界、誰も彼もが最低だ。

「言葉と別れてくれるなら何でもする。」
そんな事を言う子も出てくる、
そんな子に対して伊藤誠という主人公は迷いなく何でもする。

愛憎にまみれたストーリーは狂気をはらみ、
キャラクターたちがどんどんと壊れていく。
まともな恋愛感情ではない、愛とすら呼べないなにかへと変わり、
「狂っていく」彼らの物語に取り込まれていく。

そんな中で伊藤誠は言葉へ、ついに言ってしまう。

「俺、もう言葉のこと好きじゃないから…」

もはや彼にとって都合のいい女しか居ない。
だからこそ都合の悪い女である言葉は必要ではない。
やりたいときにやれる相手が彼にはいっぱいいる。
肉欲の果に彼が選んだのは「純粋な気持ち」で自分を好きになってくれた
言葉との別れだ。

唯一の支えを失い、心が壊れてしまった彼女が
登場人物の中で1番狂ってしまう。

現実


画像引用元:School Days 11話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

最低な主人公であり、最悪なキャラクターたちばかりだ。
だが、最低で最悪なキャラしか居ないからこそ
物語の行く末が気になってしまう。狂いに狂い、もう元には戻せない。
そんな関係性はどういう結末を迎えるのか。

「伊藤誠」という主人公はどんどん肉欲に溺れていく。
クラスメイトの女子をかたっぱし抱きまくる。
浮気や裏切りはある種の最高の蜜だ。
友人が好きな相手、友人の恋人、そんな立場にいる伊藤誠だからこそ
彼はクラスメイトの女子をかたっぱしから抱けるのかもしれない。

「もう何もかも面倒なんだよ」

この主人公がやってることは中盤以降、ほとんど女を抱いてるだけだ。
抱けば抱くほど自体は複雑にややこしいものになる。
「西園寺世界」も自分を棚に上げ彼の女性関係を責める。
だが、彼は責められれば逃げ、他の都合のいい女に行くだけだ。
彼は女体のみを求めている。彼の体目当てにあつまる女もいる。

もはやこの世界自体が狂っている。
狂えば狂うほど「言葉」も狂っていく。
だが、世界の流れに雰囲気に任されていた女性キャラクターたちを
「妊娠」という現実で我に返らせる。

当然のごとく、主人公はそんな責任を負いたくない。
彼の無責任さ、クズさ、最低さ。
女性キャラクターたちにとって魅力的に見えていたそれが
「妊娠」という現実で一気に真逆になる。

最後の最後まで待ってくれていたのは「言葉」だけだ。
多くの女が彼から離れ、最後に残った女を見て彼は噛みしめる。
狂ってしまった「言葉」を見て彼は自分の過ちにようやく気づく。
遅すぎた自覚に彼は彼なりに責任を取ろうとする。

結末


画像引用元:School Days 12話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

壊れてしまった「言葉」と妊娠した「世界」。
伊藤誠は二人に板挟みになりつつも、彼は言葉を選んでいる。
彼はこんな状況で、狂ってしまった言葉を見ても
まだ「妊娠」という事実だけは受け入れない。
彼は面倒くさいことが本当に駄目なのだ、責任を取れない男だ。

「言葉」という女性はそんな彼のすべてを受け入れようとする。
「世界」という女性は受け入れない。
彼がどちらを選ぶかは明白である。

ヒロインとの最後のキスシーン、
恋愛の結末でここまで不快にさせられる作品はない。
二人のキスシーンでもうひとりのヒロインが絶望の声を上げる。
他の作品では絶対に見れない光景だ。

最低で最悪な行為をした男に待つのは「因果応報」という末路だ。
誰しもが「そうなって当然」という結末を彼は迎える。
何もかもが遅い、何もかもが間違っている、何もかも彼が悪い。
彼の最後の姿に少しスッキリとした気持ちすら感じてしまう。
間違った選択をし続けた結果のBADENDは見ている側に不思議な
爽快感すら与えてくれる。

だが「言葉」にとっては「伊藤誠」は唯一の支えだ。
だからこそ彼を失ったことを受け入れず、
彼女自身を猟奇的な行動へと至らせる

ある意味で最初から最後まで彼女の順愛の物語だったのかもしれない。
サイコパスな主人公に対するサイコパスなヒロイン、
二人はお似合いだったのかもしれないと、
最後に描かれる二人の旅路に、どこか収まる所に収まったというような
不思議な安堵すら感じさせる作品だった。

総評:悲しみの向こうへ


画像引用元:School Days 12話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

全体的に見て凄まじいインパクトのある作品だ。
クズすぎる主人公の行動や台詞はいちいち癪に障りつつも
記憶残り、そんな彼に好意を寄せるヒロインたちの愛憎と肉欲に満ちた
行動や台詞も記憶に残り、最終話のあまりに衝撃的なラストは
1度見ればこの作品を一生忘れられないと感じさせるほどのものだ。

見てる最中の視聴者のストレスは尋常ではない。
間違った選択をし続ける主人公、そんな彼を好きなヒロインたち、
違うそうじゃないと全てのキャラクターに言いたくなるような
間違いだらけの青春模様のせいで、どこか一人ひとりに
最終的には愛着すら感じさせるのがこの作品の凄さだ。

すべてのキャラクターにある種の嫌悪を抱かせると同時に
悲哀をも感じさせる恋愛模様のせいで嫌いになりきれない。
ヒロインたち一人ひとりも好きであるがゆえの行動や台詞だ。
主人公である伊藤誠だけは理解できない部分は多いものの、
理解できないがゆえに予測できないストーリー展開を生んでいる。

面白いか面白くないかと聞かれると答えにくい作品ではあるものの、
興味深い作品ではある。どこか実験的な要素すら感じる部分もあり、
「もしギャルゲーの主人公が間違った選択肢を取り続けたら」
というような感覚で見始めると最後まで嫌悪感を抱かずに
楽しめる作品かもしれない。

個人的な感想:不思議な作品


画像引用元:School Days 1話より
(c)STACK・School Days製作委員会 2007

レビューに際して久しぶりに見返したが、
やっぱり伊藤誠という主人公は好きになれない。
だが、この作品の楽しみ方はそれでいいのだろう。
彼の間違った選択肢と因果応報な末路を楽しむ作品だ。

嫌悪感や不快に感じるシーンもあり、この作品を嫌いという感情と
「唯一無二」な作品であるがゆえに好きという感情が入り混じっている。
好きだけど嫌い。伊藤誠に対するヒロインたちの感情も
まさしくそうだったのかもしれない。

そういう感情を視聴者にも抱かせる、
もしかしたら私達も伊藤誠に恋をしていたのかもしれない。
いや…それだけはありえない(笑)

「」は面白い?つまらない?

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