評価 ★☆☆☆☆(17点) 全12話
あらすじ 長い眠りから目を覚ました姫神アキラが見たのは、彼がいた2038年から200年後の世界だった。 引用- Wikipedia
永久の痴話喧嘩
本作品はPA.WORKSによるオリジナルアニメ作品。
監督は津田尚克、制作はP.A.WORKS 。
0話
昨今、AI問題が色々とSNSでは活発に議論されているが、
本作品でも「AI」がかなり問題になっている。
AIによる犯罪、AIによる仕事の問題など、様々な問題が
我々の世界、現実世界よりも問題になっている未来の話だ。
両親を失った主人公の幼馴染はAIの開発をする科学者であり、
様々な特許を取得し、一人でシンギュラリティを起こしてると言われるほどだ。
そんな幼馴染とまるで本当の姉弟のように過ごしている。
0話の段階から今いちピンとこないのはキャラクターデザインの問題もあるのだろう。
最近のアニメというよりは2000年代前半の深夜アニメっぽさ、
どことなくギャルゲーっぽい雰囲気のあるキャラデザであり、
作画もPA.WORKSにしてはあまりクオリティが良くない。
主人公は幼馴染に恋心を抱いており、幼馴染も主人公に恋心を抱いている。
やたら「性的」なものを匂わせるシーンが有るのは謎であり、
そこも妙にギャルゲーっぽい部分がある。
アンドロイドの開発が世間的に議論される中で、
主人公とヒロインは互いの気持ちを確かめ合う。
だが、アンドロイド開発反対派がヒロインを襲おうとした瞬間、
主人公は銃弾を受けて倒れてしまう。
この悲劇的要素も90年代や00年代前半のギャルゲーっぽさ全開だ。
そんな主人公が目を覚ますと素っ裸で、
200年の時が経過していたというところから物語が動き出す。
この0話の時点では気になるところはあるものの、
話の期待感は感じる部分がある。
神
主人公は200年先の未来で眠り続けており
村では「神」と崇められている。
この200年の間になにがあったのか、技術も滅び、文化も衰退している。
オウウェルという組織により戦争のない社会になっているものの、
その代償として文化が衰退している。
結婚という概念すら「エルシィ」という言葉に変わっている。
そんな概念の言葉はもともとヒロインの考えたものだ。
どこまでヒロインがこの世界に関わっているのか、
この世界には何があったのか、SF的な面白さはしっかりと感じる。
理不尽とも言える管理社会、情報統制が強いられている世界で、
主人公は幼馴染そっくりなアンドロイドと出会い、
いきなり求婚される。
急展開に急展開を積み重ねる物語の作り方は
「引き」を意識したものになっているのは分かるが、いまひとつ引っ掛かりが生まれない。
ロードムービー
3話になるとロードムービーが始まる。
味方であるアンドロイドと敵であるアンドロイドも同じ顔をしており、
幼馴染そっくりなアンドロイド「ユウグレ」に何を聞いても
禁則事項ですと教えてくれず、幼馴染が残したメッセージには
自分を探すなと残されている。
主人公は組織に狙われながらも、この世界のことを、幼馴染のことを
探るために東京へ旅をすることになる、いわゆるロードムービーだ。
オリジナルアニメはロードムービーをやりがちだ、
ただ、そんなロードムービーをやる多くのオリジナルアニメは失敗している。
旅をしながら舞台を変え、新しいキャラも出しやすく、
メインとなるストーリーも任意に進めやすい。
だからこそロードムービーという手段は使われがちだが、
使われがちなゆえにその欠点もでやすい。
メインとなるストーリーがなかなか進まずにダラダラしてしまう感じだ。
ロードムービーはかつて2クールが当たり前のTVアニメの時代ならば
効果的に作用する部分があったが、1クールが当たり前の時代では厳しい。
2話では現地民的な新キャラが出てきて裏切られたり助けたりして、
組織の色々な敵が定期的に襲ってくるのだが、
それがとくに展開として面白いわけでもない。
見ている側としては早く世界の謎を知りたいのに
どうでもいいストーリーで水増ししている感じだ。
痴話喧嘩
やりたいこと、描きたいことは理解できる。
この作品の未来の世界では結婚に変わり「エルシー」という
概念が生まれている、結婚とは違い人数にも性別にも制限がない、
包括的な結婚、新しい家族の形ともいえるものだ。
旧世代の人類である主人公にはその概念がいまいち理解できず、
エルシーを迫ってくるキャラや、アンドロイドであるユウグレが
出会ってすぐに結婚を迫ってきたりして戸惑う。
彼にとっては幼馴染だけが愛する相手だ。
ロードムービーの中でそんな様々な愛を描いている。
例えば権力や立場を守るために打算的にエルシーしようとする
マフィアの女がいるのだが、彼女は本当は同じマフィアであり
血のつながりのある弟のことを愛してる。
実の姉弟でもエルシーは認められているが、
この時代でも血族関係で子供を生むという行為は禁忌となっているらしく、
そんな関係に迷う。
こういう本筋には関係ないようなどうでもいい話が続く。
序盤で示されたメインストーリーが進んでいる感じがなく、
どうでもいい痴話喧嘩やどうでもいい愛の物語を
序盤が過ぎたらひたすら見せられている感じが強い。
そんなマフィア同士の痴話喧嘩が終わると、
また別の痴話喧嘩に主人公が巻き込まれる。
心底、本当に心底どうでもいい。
そんな痴話喧嘩の中でアンドロイドである「ユウグレ」に
本当の愛が目覚めてく、いわゆるAIの自我の目覚め、AIの愛みたいなのも
ロードムービーの中で描きたいのは分かるが、
特にそこに新鮮味もなければ描き方も悪い。
禁則事項
ユウグレに何を聞いても基本的には「禁則事項」なのだが、
5話で出てくる新キャラが世界の情報をあっさり教えてくれる(苦笑)
人類とAIが戦争になり数十億の人類が犠牲になっている。
その戦争を終わらせたのが幼馴染であり、
組織が真実の歴史を規制し、歴史が繰り返さないようにしている。
幼馴染は組織を立ち上げたり、アンドロイドを作ったものの、
200年前の出来事が既に死んでいるかもしれない。
これくらいの基本的な情報ですら序盤で明かさずに、
ぽっと出の新キャラに説明されるのは意味不明でしか無い。
情報の開示の仕方がシンプルに下手くそだ。
ユウグレとデートしたり、現地民がそんな二人に嫉妬したり。
序盤こそアンドロイドであるユウグレによる戦闘シーンなどがあるのだが、
序盤をすぎるとそんな戦闘シーンもなくなる。
どうでもいい痴話喧嘩、どうでもいいラブストーリーを
ひたすら見せられる。見なくてもいい話が多すぎる作品だ。
途中で男が一人旅に加わるものの、その過程も甘い。
主人公に対して恋心を寄せる二人のヒロインに対しても
「どうしてこいつが好きなんだろう?」と思うほど主人公に魅力がなく、
二人のヒロインの印象も薄い。
2話くらいから8話くらいまで話をすっ飛ばしても
問題ないくらい中盤の物語の薄さが致命的だ。
色々な痴話喧嘩を盛り込みまくっても盛り上がりが生まれず、
アンドロイド同士の戦いにも面白みも生まれていない。
秘密
終盤で主人公であるアキラの秘密が明らかになる。
コールドスリープから目覚めたと思っていた彼だったが、実はアンドロイドだ。
そんな主人公のとっておきの秘密が明かされた所で、
中盤の時点でこの作品に対する熱量は完全に冷めており
「あ、そう」という感想しか湧いてでてこない。
10話になると過去に何があったのかが明かされる。
AIに対する議論が加熱する中、人類のAIに対する疑念を払うべく、
まず「人類」そのものをアップデートさせることで
AIに対する恐怖心を取り除こうとしている。
序盤のあの事件で実は主人公は死んでいなかったものの、
ヒロインは「子供」を生むことができなくなってしまう。
そういう問題はありつつも、人類と機械を結合させるためのLC計画は成功し、
人類の9割が体内にナノマシン的なものを取り込んでいる。
だが、そのナノマシンはハッキングできてしまうことが明らかになる(笑)
ハッキングされたら人間は勝手に操作できるうえに、
もうナノマシンは取り除けない。ちなみに遺伝もする。
ヒロインのやらかしだ。ヒロインに同情の余地は一切ない。
解決するためのAIを開発した所、そんなAIが暴走し、
結果として人間社会は崩壊、人類の9割が死亡する戦争が起こる。
ヒロインのせいで世界が滅亡だ。
とんでもない世界観に笑いしか起きないが、
これを「過去回想」で10話の1話だけで見せてしまう、
1クールくらいの内容をたった1話でまとめている。
本当に最初から最後まで見せ方が下手な作品だ。
本来はそこをもっと丁寧に描けばいいのにそれはできない。
ヒロインがAIを作って広めたせいで人類の9割は死に、
再び人類がAIを作らないようにヒロインが力で情報統制し
人類を管理している、とんでもない大悪党だ。
こんな下手な見せ方ではヒロインにも主人公にも
「可哀想」という感情は生まれず、
こいつらなにやらかしてるんだ?という思いしか生まれない。
アンドロイドたち
主人公は主人公の幼馴染を探すためのアンドロイドだ。
そんなアンドロイドたちの自我の目覚め、愛の目覚めを描きたかったのだろうが、
人間だった主人公と幼馴染のやらかしがすごすぎて、
そんな物語に感動できることもない。
終盤で一気に時間が流れ7年の月日がたつのも話についていけず、
慌てて風呂敷を畳むように主人公のオリジナルが見つかったり、
そうかと思えば次々ととあるキャラの陰謀でメインキャラが無残なことになる(笑)
本来は2クール予定だったものが1クールになったのか、
この終盤の話の片付け方の下手さは厳しいものがある。
最終話のゴチャゴチャ感は凄まじく、
ラストで綺麗に物事を解決した感じはあるものの、
結局、幼馴染が悪かったのでは?としか思わなかった作品だった。
総評:幼馴染のせいで人類の9割が滅亡!?
全体的に見てひどすぎる作品だ。
序盤の段階ではストーリーへ期待ができる部分が多く、
200年の時がたち文明がリセットされたような社会で目覚めた主人公と
アンドロイドなヒロインが出会うまでは良かったものの、
そこから先はずっと痴話喧嘩を見せられている。
作品としてAIの自我の目覚めやAIの愛というのを描きたかったのは分かる。
その過程として色々な愛の形をアンドロイド達に見せたかったのだろう、
だが、見ている側としてはそんな痴話喧嘩は犬も食わないレベルでしかなく、
早く作品の謎を解き明かしてほしいのにグダグダグダグダ痴話喧嘩ばかりして、
10話まで引き伸ばしてしまう。
その10話からの展開は本当にひどく、
さんざん引き伸ばした謎はたった1話で全部過去回想で片付け、
終盤は邪魔になったキャラを雑に片づけたり、
実はこうでした。という秘密が明かされても驚きがないのは
この痴話喧嘩のグダグダさのせいだ。
本来は2クールくらいの規模のストーリー、設定、キャラ数であり、
それが1クールに圧縮した結果、終盤で夜逃げのように
色々と片付けた形になったのかもしれない。
まるで打ち切り漫画でも見ているかのような終盤だった。
もう少しどうにかならなかったのか、
題材は良かったのに色々と台無しになってしまった作品だった。
個人的な感想:PA.WORKS
PA.WORKSは果敢にオリジナルアニメに挑戦する素晴らしい制作会社だが、
作画的にもストーリー的にも、この作品は無理をして
作っているように感じてしまった。
本来は2クールあればさばき切れたかもしれない設定やキャラ数だったり、
作画の微妙さも、この作品自体の練り込みの甘さも、
余裕があれば違っただろう、だが、その余裕がなく、
焦りを感じてしまう作品だ。
ただPA.WORKSのオリジナルアニメはこういう作品も多いだけに
社風とも言えるかもしれない(苦笑)



