評価 ★★★☆☆(45点) 全12話
あらすじ 普通の男子高校生・真名部響生は、ある日突然、魔物も潜む異世界の広大な草原に転移してしまった。見たこともないファンタジー世界を、あてもなく彷徨っていたヒビキだが、自身に『鑑定』というスキルと、職業『鑑定士(仮)』が与えられている事に気が付く……引用- Wikipedia
弾けろボタン!砕けろ知性!
原作はアルファポリスで連載中の小説作品。
監督は星野真、制作はスタジオフラッド。
ノリ
1話から独特のノリがある作品だ。
主人公はいきなり異世界転移し、わけもわからぬままに、
兎の魔物が襲われており、別の場所ではエルフなヒロインが登場する。
そんなエルフのヒロインの胸のボタンが、
唐突に巨乳ゆえに弾け飛ぶ。
なんなんだこのアニメ?
思わずそう言いたくなるような独特のノリがあり、
そのノリをしっかりと1話冒頭から見せつけてくる。
OP中には「本編にはない映像です」というテロップつきのシーンがあったりと、
かなりギャグテイストが強い。
タイトル通り主人公には鑑定スキルがあり、
たまたま倒した兎のモンスターを鑑定し、食べられることが発覚する。
ちなみに兎のモンスターにはきっちりモザイクが掛かっている。
キャラクターデザインもあいまって軽いノリで進んでいき、
ジョジョのパロディなども織り交ぜてくる。
この強烈に軽いノリは好みが分かれるところではあるものの、
思わず「クスッ」と笑ってしまえば、
この作品にハマってしまったことと同義だ。
アホ
主人公は強烈にアホだ。
エルフなヒロインと出会うと
「海外の人かな?」と言ったり、
その姿を見てもコスプレしている人だと認識する。
自身に身についたスキルなどの把握も強烈に遅い。
鑑定スキルで「異世界」と表示されても、
「異世界?なにそれ?」
だ。
このアホっぷりが清々しい。
なろう系主人公ならば転生や転移をして1秒で理解するようなことを、
たーっぷり時間をかけて理解していく。
1話が始まって10分くらいで、
ようやく自分が異世界に来たことを把握する。
そうかと思えば、
エルフなヒロインの胸のボタンがまた弾け飛ぶ(笑)
胸のボタンを指摘してヒロインにぶっ飛ばされる主人公など、
久しぶりに見たようなシーンだ。
常にギャグを挟みながら進んでいくストーリーはテンポがよく、
心地良いリズムで描かれている。
主人公を演じているのは金元寿子さん、
エルフなヒロインを演じているのは伊藤静さんという
「ベテラン」だからこそ、この軽いノリのギャグも
キャラクターの演技でしっかりと後押しされている。
展開自体は急に異世界転移して、
冒険者ギルドに登録して冒険者になるという
「いつもの」なろう系だ。
だが、そこをギャグで埋め尽くすことで、
テンプレート的な展開をテンプレートとして感じさせない。
「またこれかよ」と感じる暇を与えず、
アホな主人公や癖のあるキャラが何かをやらかして笑わせてくる。
そこにこの作品らしい面白さがある。
スキル
しかも、この作品は意外にもスキルの習得が簡単ではない。
最初に手に入れる「医学書」というスキルも、
ずーっと寝込んで情報を頭に叩き込まれる。
簡単に治療魔法を使えるようになるという「チート」な展開でもなく、
きちんと努力やスキルを使うための過程がある。
鑑定スキルで鑑定したらスキルを大量ゲット!
とはならない。
鑑定士であるがゆえに彼には戦闘力らしい戦闘力もなく、
少しずつできることを増やしていく。
そのために「奴隷」を買うという、
なろう系らしい展開もあるのだが、
「奴隷制度とは……」
などと延々悩むわけでもない。
彼が努力で得た治療魔法で傷ついた奴隷を助け、
恩を売ったうえで仲間にする。
その流れにはきちんと納得ができる。
奴隷は勇者と賢者であり、
そんな勇者にかかった呪いを解くというシーンがあるのだが、
巨大なハサミを召喚して体ごと切る(笑)
その光景を見て、思わず主人公が
「死んだー!?」
と叫ぶ展開など完全にギャグだ。
普通に描けば「いつものなろう系」で終わりそうな展開を、
ことごとくギャグに変えてしまう。
ベタな展開をベタに感じさせず、
小気味よいテンポで進んでいく感じは素晴らしい。
変なご都合主義を感じさせないのも好印象だ。
奴隷二人をパーティーに加えることで、
よりワチャワチャ感が増していき、
ギャグアニメとしての面白さも強くなっていく。
謎
そんなアホなノリの裏で、
意外にも世界観にはかなり多くの謎がある。
この世界には複数の神様がおり、
その中の一柱が何かの目的で主人公を異世界へと招いている。
なぜ主人公を招いたのかはなかなか明かされず、
もともと神と主人公が知り合いだったような描写もある。
さらに何人もいる勇者や魔王、
主人公の元の世界での幼馴染など、
さまざまなキャラクターの視点が描かれていく。
ただ、ここは本作品の弱いところでもある。
謎は次々とばらまかれるのだが、
なかなか答えが明らかにならない。
別行動しているエルフなヒロインの視点だったり、
「死者殺し」と呼ばれている主人公の元の世界での幼馴染のパーティーだったり、
いろいろな視点で描かれる割には、
物語そのものが進んでいる感覚は薄い。
主人公も鑑定士としてレベルを上げながら、
少しずつ戦う力を身につけていくものの、
基本的には苦戦を強いられることのほうが多い。
ピンチのときには神様が手助けしてくれるが、
それでもギリギリだ。
なろう系作品特有の「オレツエー」感やチート感は薄く、
そのあたりのバランスはうまい。
しかし、最終話では主人公にそっくりな神が目を覚ますものの、
1クールを通して世界の謎はほとんど明らかにならない。
物語として見れば、
ぶっちゃけほとんど何も解決していない。
それなのに不思議と腹が立たない。
なぜなら、この作品は最初から最後まで
「物語の謎を解き明かすアニメ」というより、
このキャラクターたちのワチャワチャしたギャグを
楽しむアニメとして作られているからだ。
胸のボタンが弾けて始まり、
胸のボタンが弾けて終わる。
一貫したアニメだった。
総評:このアホっぷりがたまらない
全体的に見て、非常に「軽いノリ」の作品だ。
1話では胸のボタンが弾けて始まり、
最終話では胸のボタンが弾けて終わる。
そんなバカバカしいともいえるギャグが常にあり、
なろう系特有のテンプレ的な要素はありつつも、
そのテンプレをテンプレに感じさせない工夫がなされている。
この作品の面白いところは、
普通のなろう系ならば「またこれかよ」と感じそうな展開を、
アホな主人公とギャグで
「まあいいか(笑)」に変えてしまうところだ。
異世界転移、冒険者ギルド、鑑定スキル、奴隷、勇者、魔王。
並べてみれば、
これでもかというほど見慣れた要素ばかりだ。
それなのに見ていてストレスがない。
主人公が必要以上に賢くないからこそ、
視聴者より先回りして何もかも理解してしまうこともなく、
チート能力ですべてを解決してしまうこともない。
アホだから悩む。
アホだから勘違いする。
アホだから失敗する。
そして、そのたびにギャグが生まれる。
この「アホさ」こそが、
テンプレートだらけの設定をテンプレートに感じさせない
最大の武器になっている。
作画に関してはアニメーションとしての枚数こそ少ないがしっかりしており、
1クールを通して安定している。
声優もベテランぞろいで、そんなベテラン声優たちが
この作品のギャグを彩り、さらに面白さを後押ししている。
ストーリー的には世界観や設定の謎がかなりあるタイプの作品だが、
1クールではほとんど明らかにならない。
物語だけを見れば完全に序章だ。
2期の可能性も低いことを考えると、
ある程度割り切って、
1クールをギャグで埋め尽くしていたのかもしれない。
その一方で、ギャグの中に主人公や世界の謎を匂わせ、
「続きが気になるなら原作で」という導入もきちんとなされている。
決して名作というわけではない。
壮大な物語があるわけでもなければ、
圧倒的な作画があるわけでもない。
でも、見ていて楽しい。
1クールに1本くらい、
こういう何も考えずに笑える作品があってもいい。
そう感じさせてくれる作品だった。
個人的な感想:ギャグ
なろう系はここ最近、距離を置いていたが、
久しぶりに見ていてストレスがなく、
変な引っ掛かりもなく楽しめる作品だった。
人によってはこのギャグのテイストが合わない人もいると思う。
むしろ1話を見て笑えないなら、
最後まで合わない可能性は高い。
いい意味で1話から最終話までノリが変わらず、
安定している作品だった。
配信人気的には2期はないだろうが、
もしあれば私は普通に見てしまう。
そんな妙な魅力のある作品だった。



