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なにもかもが酷すぎる金欠映画「君と花火と約束と」レビュー

君と花火と約束と 映画
画像引用元:(C)映画「君と花火と約束と」製作委員会
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この記事を書いた人

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。 個人的な視点で語るアニメ批評です。

評価 ☆☆☆☆☆(6点) 全96分

映画『君と花火と約束と』本予告【7月17日(金)公開】

あらすじ 高校入学直後のある日、夏目誠は同級生の葉山煌と出会う。煌は幼い頃から曽祖母に「いつか夏目誠と出会う」と語られており、一枚の花火の絵を手にしていた。 引用- Wikipedia

なにもかもが酷すぎる金欠映画

原作は小説の本作品。
監督は鈴木慧、制作はシンエイ動画。

佐藤勝利

この作品は公開前から不安しかなかった作品だ。
予告編を見ていただくのが1番わかりやすいのだが、
本作の主人公を演じている「佐藤勝利」さんの演技がシンプルに厳しい。

アニメでの声優経験は初めてのようだが、
新人俳優というわけでもなく、これまで多くのドラマや映画に
出演されている人気アイドルであり、演技の経験も豊富なはずだ。
しかし、少なくとも本作における声の演技は、
その経験がほとんど感じられないものになっている。

台詞によっては、まるで映画館全体が
学生時代の教室のような雰囲気に包まれる。
先生に指名されて席を立ち、国語の教科書の一文を
読みたいわけでもないのに読まされる。
まさにあんな感じの「文章を読んでいます」という空気が伝わる演技だ。

これを演技と言って良いのかすらわからない。
ただ脚本を、なんとなく抑揚をつけて読んでいるように聞こえてしまう。
これでデビューしたばかりのアイドルや俳優なら、
まだ「若手」だから、「新人」だからと擁護のしようもあるが、
デビューして15年ほど経ったアイドルに、同じ擁護はしづらい。

主題歌には佐藤勝利さんが所属する「timelesz」の曲が起用されており、
恐らくこの作品は最初からそれありきの企画なのだろう。
佐藤勝利さんの初アニメ映画で、timeleszの曲を使う。
その企画性が主軸になっているように、作品全体から感じてしまう。

ヒロインを演じている「原菜乃華」さんの演技が
素晴らしいだけに、余計に佐藤勝利さんの演技の酷さが
際立ってしまっているのも厳しいところだ。

グダグダ

この作品のテンポは恐ろしいほど悪い。
映画の尺自体は96分なのだが、余計なシーンをカットすれば
60分もかからず終わるのではないかと思うほどだ。
それくらいグダグダなテンポ感で物語が進んでしまい、
間延びしまくったストーリーにはなんの感情も乗ってこない。

特にひどいのは序盤だ。
絵を描くことをやめてしまった主人公が、とある少女と出会い、
絵をまた描き始め、コンクールに応募するものの落選し、
少女とも喧嘩をしてしまう。

しかし、そんな少女は長岡に引っ越すことになっており、
それを知った主人公は彼女を追いかける。
この一連の展開をやるために、序盤の30〜40分を使っている。

中盤以降もテンポ感は変わらず、
話がろくに進まない96分は苦痛でしかない。

そもそもの脚本、キャラクター描写も違和感が凄まじい。
主人公が序盤で「アキ」という少女に学校の下駄箱で出会うシーンがある。
「アキ」はなぜか主人公の名前を知っており、
昔から知っているような態度で接してくる。

だが、主人公はそんなことに対して突っ込んだりしない。
もう少し、自分の名前や自分を知っていることに対する反応があっても
良さそうなものなのに、ほとんどノーリアクションだ。
こういう脚本の細かい違和感が積み重なっているのが、この作品の特徴だ。

主人公が絵を描くことをやめていた経緯も非常に些細なもので、
「アキ」に言われたらあっさりと描き始めるのはいいのだが、
都合よく学校の美術室を誰も使っておらず、主人公が一人で使いたい放題だ(苦笑)。
これで田舎の数人しかいないような学校ならわかるが、
東京の学校で美術室を誰も使っていないというのは違和感しかない。

そんな絵を描く描かない問題がありつつ「アキ」との仲を深めていくのだが、
「アキ」は母親を幼い頃になくしており、それを自分のせいだと思っている。
シングルファーザーの家庭で育ち、曾祖母が話していた
「夏目誠」という男の子に夢を膨らませている。

要は刷り込みである。
アキはずっと夏目誠という少年の話を曾祖母から聞かされて育ち、
しかも、そんな曾祖母はなぜか主人公が描いた覚えのない絵を持っている。

そんな「絵」の謎を中盤でようやく解き始めるのがこの作品だ。
出会った時点から進められる話をなかなか進めず、
40分くらい経ってようやく本題に入る始末だ。

タイムスリップ

ようやく長岡で絵の謎を捜索し始めると、
曾祖母の家に謎の少女がタイムスリップしてくる。
その少女こそ、曾祖母である「ハル」だ。

ハルが未来になぜか来てしまったせいで、アキの存在が
タイムパラドックス的に消失してしまうのだが、
ハルは未来を楽しみながら主人公と交流していく。
しかし、実はハルはハルではなく「フユ」であることが発覚する。

もう映画を見ていない人には、わけがわからない話だろう。
この「フユ」は「ハル」の双子の姉だ。
フユは花火師である男のことが好きだったが、その男が妹のハルと恋仲になり、
自分の気持ちを諦めて、ハルと花火師を見守っていた。
だが、空襲が起きた際に、なぜか未来へ飛ばされてしまっている。

そんなフユの事情やらなんやらをひたすら聞かされるのだが、
心底どうでもよく、フユだのハルだのアキだの、
ややこしい名前を聞かされながらグダグダと話が進んでいく。

金欠

未来で色々と満足したフユは、過去に戻ると言い放つ。
そもそもなんの脈絡もなくタイムスリップして未来に来たのに、
なぜか「帰れる自信」があるのも謎だ。
すると主人公は、フユが過去に帰る前に準備をし始める。

空襲に耐える準備である(苦笑)。

唐突にホームセンターに訪れたはいいものの、
金欠で200円ぽっちしか持っていない主人公が母親に電話して頼み込み、
2万円振り込んでもらうという、どうでもいいパートまである。
ちなみに、2万円ぽっちかよと私は思わず感じてしまった。

そんな2万円で、空襲に耐えるアイテムをホームセンターで
手に入れなければならない。
一体何を買うのか、一回、この記事を読んでいるみなさんも想像してほしい。

防弾チョッキなどは値段的に厳しいかもしれない。
だが、ヘルメットやプロテクター的なものは買えるだろう。
そういう想像をしながら、
全身武装状態で過去に返すのか……と思いきや、
フユが過去に帰る際に持っているのは、ビニール袋に入っている何かだ。

いざ過去に戻り、そこから取り出したのは「防炎ポンチョ」である(苦笑)。
しかも1枚だ。

1枚だけの防炎ポンチョを買うために、
わざわざホームセンターに寄り、母親に電話をするパートが生まれている。
明らかにいらないうえに、過去で特に役に立った感じもない。

勢い任せ

主人公が金欠でなければ、もっと良いアイテムが買えたかもしれないが、
この主人公は自分勝手なうえ、勢い任せで行動してしまう人物だ。
ヒロインを追いかけて長岡までやって来た結果、金欠になり、
必要なものを買うだけのお金さえない。

恐らく防炎ポンチョが1枚だったのは、
帰りの新幹線代を引いたら、それしか買えなかったのかもしれない。

勢い任せで、自分勝手で、思いつきで行動する。
そんな主人公の終盤の行動はえげつなく、
「フユ」が帰る寸前に「ちょっと待って!」と現代の花火師のもとに行き、
「ハル」の旦那が作った花火を今日、再現してくれないか!と、
明らかに無理難題を頼みに行って断られたりする。

そうかと思えば、フユが過去に帰ったあと、
ハルの旦那の花火が埋められた場所を掘り返し、
その花火を上げるために花火大会中の長岡を大暴走だ。

必死に走って、必死に花火を上げようとしているのはわかる。
だが、自分勝手な主人公と、感情が伝わってこない演技のせいで、
この主人公に感情移入することが一切できない。

仮に演技が良かったとしても、無茶苦茶なことばかりしている主人公に
どれだけ感情移入できたのかは疑問だ。

最終的にはハッピーエンドで終わっているのだが、
そもそも主人公が金欠でなければ、
助かった命もあったのでは……と思う映画になってしまっていた。

総評:何もかもひどい映画

全体的に見て、何もかもがひどい映画だ。
主人公を演じる芸能人の声の演技、ストーリー構成、
脚本自体の違和感、どこを褒めれば良いのかわからない作品だ。

作画の部分に関しても、序盤でやたら暗すぎるシーンがあったり、
昨今のアニメ映画としては見劣りしてしまう作画でしかない、
終盤のメインともいえる花火のシーンも特に感動を呼ぶほどの
美麗な作画でもなく、今年は「花緑青が明ける日に」という花火を
題材にしたアニメ映画もあったため、比較すると余計に見劣りしてしまう。

序盤から中盤までは淡々とした展開でアニメーション的な面白さが一切なく、
盛り上がりどころと言える花火でさえ見落としてしまう、
わざわざ「スクリーン」でみたいと思えないアニメ映画だ。

この映画の公開前に「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」という
映画の予告があり、本作と非常によく似た要素がある作品だ。
「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」 と「花緑青が明ける日に」 を
合体したらこんな漢字の作品になるだろうと感じてしまう作品だ。

本作の1つ1つの要素の「斬新さのなさ」が際立ってしまい、
没個性すぎる作品に感じられた。

佐藤勝利さんを起用し、timeleszの楽曲を主題歌にする。
そうした企画が先行し、肝心の物語やキャラクターが
後回しになってしまったのではないか。
そう疑いたくなるほど、作品としてのまとまりがない。

思わずそう感じてしまうほど何もかもがひどい作品で、
この作品を面白くしようとする制作側の気合のようなものを感じない。

ネタバレになってしまうが、空襲でフユは死に、
その死に際に主人公の名前を教え絵をハルに渡している。
それくらいの情報しかない男の子の名前をハルは
ひ孫に刷り込むレベルで話していたのも謎でしか無い。

もう少し脚本がなんとかならなかったのか…と感じてしまう作品だった。

個人的な感想:防炎ポンチョ

序盤から中盤までは気絶しそうになりながら見ていた作品だったが、
終盤からは酷すぎて逆に面白かった作品だ。

主人公が空襲から身を守るアイテムを買ってあげる!という話から、
防炎ポンチョ1枚しか買っていない流れは笑うしかない。
もし防炎ポンチョ1枚ではなく、きちんとした装備だったら、
守れた命もあったかもしれない。

全ては金欠な主人公のせいか。
もしくは主人公が決死の頼み込みをしているのに、
2万円ぽっちしか振り込んでくれない母親のせいである(苦笑)。

長岡に来て、どうしてもお金が必要なんだ!と頼み込んでいる息子に、
必要な額を聞くわけでもなく、長岡から東京に帰るための
ギリギリの交通費しか振り込まない母親はどうなんだろうか。

もちろん、10万円や100万円を振り込んで
フルアーマーフユが完成してしまうと、
歴史が変わってしまう恐れもあるため、仕方ない部分もあるのかもしれない。

だが、こういう細かいところを練り切れていないため、
真面目な場面であればあるほどツッコミどころが生まれてしまう。
最後まで違和感と笑いが入り混じる、凄まじい作品だった。

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