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インバウンド向けアニメ「メイドさんは食べるだけ」レビュー

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メイドさんは食べるだけ 日常
画像引用元:©前屋進・講談社/食べるだけを見てるだけの製作委員会
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この記事を書いた人

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。 個人的な視点で語るアニメ批評です。

評価 ★★☆☆☆(30点) 全12話

あらすじ イギリスの屋敷に仕えるメイドのスズメは、諸事情により屋敷が崩壊してしまい、屋敷が直るまでの1年間は日本でメイド修行をすることに。引用- Wikipedia

インバウンド向けアニメ

「メイドさんは食べるだけ」に似てるアニメレビュー

原作はコミックDAYSで連載中の漫画作品。
監督は泉保良輔、制作はMTスクエアード。

メイド

本作品の主人公は、タイトル通りメイドだ。
イギリスのとある屋敷に仕えるメイド。そんなメイドのお屋敷が
事故で倒壊してしまい、建て直しが終わるまでの1年間、日本で過ごすことになる。

現代日本にメイドがいるという異質さが、いかにもアニメらしい設定として機能しており、
そんなメイドさんが日本の食文化を楽しむ。
この作品は、基本的にはそれ以上でもそれ以下でもない。

1話ではたい焼きを食べ、たこ焼きを食べ、お団子を食べ、
コンビニおにぎりを食べ、バウムクーヘンを食べて終わる。
基本的にショートエピソードをつなげた構成になっており、
1話5エピソード構成だ。

イギリスのメイドさんが日本で1年間過ごし、
おいしいものをひたすら食べる。
設定としては非常に分かりやすいが、そのぶんフックは弱い。

現代という設定において、メイド服のメイドというのも
やや違和感がある設定であり、日本でもメイド服のまま過ごしている点にも
少し引っかかる。

もちろん、そこを深く考える作品ではないのだろう。
メイドが日本のグルメに驚く作品をやりたかったという意図は分かるが、
その分、設定のための設定に見えてしまう部分もある。

出落ち

メイドはガイドブックを所持しており、そのガイドブックの中に出てくる
「チュン」というスズメがたびたび登場し、
メイドが食べるものの豆知識や雑学をさらっと披露する。
本当にガイドブックでも読んでいるような感覚で、
説明セリフとしてはやや不自然さがあり、違和感が強い。

1話の時点で作品の型はほぼ見えてしまい、出落ち感は否めない。
2話になるとキャラもどんどん追加され、
メイドと日本食という基本設定だけでは話を広げきれないため、
キャラを追加することでエピソードを作り出している印象だ。

メイドが住むアパートの住人、近所の子供や男子高校生、祖母、
もう一人のメイドなど、話を進めながらキャラを追加し、
そのキャラとの関係性に
食事を絡めてエピソードを作り出している。

この方向転換自体は悪くない。
ただ、序盤の時点で「メイドが日本食を食べて驚く」という構造が
すでにマンネリ化しているため、
キャラクターを増やして日常アニメとして広げていく必要があったようにも見える。

食事

商品名が出るときと出ないときがあるが、
銀だこ、治一郎のバウムクーヘン、信玄餅、ボーロ、ポカリスエットなど
色々な食べ物が出てくる。
どれもきちんとした作画で描かれており、
メイドもオーバーすぎないリアクションに収めている。
いい意味で小綺麗に描かれているが、悪い意味で言えば面白みがない。

この手のグルメアニメは、『孤独のグルメ』のドラマのヒットで
グルメ系漫画が一気に増え、その後、多くのグルメアニメが生まれた流れがある。
『幸腹グラフィティ』『ラーメン大好き小泉さん』『異世界食堂』
『異世界居酒屋「のぶ」』『ワカコ酒』『甘々と稲妻』『だがしかし』
『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』etc……

今から10年ほど前にブームになり、一気に作品数が増えたが、
そのブームも鳴りを潜めている。
この作品の連載自体は2019年から始まっており、
いわゆるグルメ漫画ブームが落ち着いた頃に始まった作品だ。

そのため、アニメとして見ると「今更感」がある。
10年くらい前にこの作品がアニメ化されていたら、
グルメアニメブームの中の1つとして、もう少し違った評価が
できたかもしれない。
だが、今見ると、あまりにも遅咲きすぎるグルメアニメであり、
メイドという特徴以外は、強い個性に欠けている。

オーバーなリアクションがあるわけでも、
駄菓子やラーメンなどのマニアックさがあるわけでもない。
日本人にとって身近で「おいしい」ことを知っているものを、
当たり前のようにおいしいと言っているだけに見えてしまう。

インバウンド

ただ、これは「日本人」が見た場合だ。
2019年という連載開始時期を考えると、日本はインバウンド客が
どんどん増えていた時代だった。
そう考えると、もしかしたら、この作品はインバウンド、
海外向けの作品として見るべきなのかもしれない。

日本人が見ると、熱中症になりかけてポカリスエットを飲んでおいしいなど、
当たり前すぎて何の面白みもない。
しかし、これが海外の人が見た場合はどうだろうか?

主人公であるメイドと同じように、
新鮮な気持ちで日本の食事の数々を楽しめて、
「食べてみたい」という感情が生まれるかもしれない。
日本のアニメであり、日本で放送されている作品ではあるが、
メインターゲットは海外の視聴者なのではないかと思うと、
納得できる部分もある。

逆にそうでないのなら、あまりにも普通すぎて語ることが少ない作品だ。
毎エピソードの冒頭に、そのエピソードに出てくる食事の名前が出てくるのだが、
その食事の「英名」も出てくるところがある。
このあたりを見ても、やはり海外向けを意識した作品なのかもしれない。

日本人にとっては日常の延長にある食べ物でも、
海外の人にとっては「日本に行ったら食べてみたいもの」になる。
そう考えると、この作品の淡々とした日本食紹介は、
アニメというより観光ガイドに近い役割を持っているようにも見えてくる。

関係性

序盤の段階で、インバウンド向け日本食紹介アニメとしての構造は
ある程度出落ちになっており、
中盤からは多くのキャラクターとの日常描写がメインとなる。
メイドさんと男子高校生のほのかな恋愛模様、もう一人のメイドさんとの
百合な関係性など、日常アニメとして悪くないエピソードが描かれている。

むしろ中盤以降は、食事そのものよりも、
食事を通じて生まれる人間関係の方が作品の中心になっている。
この方向性自体は悪くない。
メイドさんのキャラクター性や、周囲の人たちとの距離感には
穏やかな魅力がある。

メイドが日本に来てからの1年間が1話1話描かれており、
季節が巡ったところで物語が終わる。
これで1クールである程度、物語が完結していれば印象は違ったかもしれないが、
1クール終わってもメイドがイギリスに帰ることもなく終わっており、
物語としては中途半端なところで終わっている。

あくまでいつもの日常で終わっており、
原作ストックもほぼ使い尽くしている。
かなりのハイペースで原作を消化したストーリー構成になっており、
30分アニメというより、5分アニメくらいがちょうどいい作品だったかもしれない。

1話5エピソード構成でテンポよく進む一方で、
その分、ひとつひとつの食事や関係性の余韻は薄くなりがちだ。
短編ならその軽さが強みになったかもしれないが、
30分アニメとして見ると、どうしても薄味に感じてしまう。

総評:インバウンド向け日本食紹介アニメ

全体的に見て、微妙な作品だ。
作品の雰囲気やキャラクターこそ悪くないものの、
「日本食」をテーマにした内容は、序盤の段階で出落ちとマンネリになっており、
中盤からは日本食よりも、人間関係の方に重きを置いている。

様々なグルメアニメと比べるとインパクトが薄く、
メイドという特徴以外は、淡々と色々な日本食を紹介している印象が拭えない。
日本人が見ると、当たり前のことを当たり前に紹介しているだけに見えてしまうが、
海外の人が見ると「日本食」というものを知れる
アニメになっているのかもしれない。

そういった意味での面白さはあり、作画も安定している。
ただ、1話30分という尺と合っていたとは言いづらい。
短編アニメだったら、マンネリ感や出落ちを感じる前に終わったかもしれないだけに、
30分アニメにしてしまったことで、原作ストックをほぼ消費するような速度で
消化されてしまった印象が残る。

日本食紹介アニメとして見ると新鮮味が薄く、
日常アニメとして見ると少し物足りない。
その中間にいる作品だからこそ、
雰囲気は悪くないのに、いまいち強く残りきらないアニメだった。

個人的な感想:雰囲気

雰囲気はよく、キャラもいいのに、いまいちハマりきれない作品だった。
あの「高橋ナツコ」女史が脚本を手掛けているものの、
二人体制であり、日常アニメであるがゆえに悪癖も感じず、
1話30分という尺に原作のエピソードをうまく詰め込んでいた。

ただ、何度も言うようだが、出落ち感とマンネリが強い。
漫画の1話として読むのと、アニメの1話の中にある5エピソードのうちの
1つとして「見る」のでは、だいぶ感覚が変わってくるだろう。

漫画なら軽く読める日本食紹介として成立していたものが、
アニメになることで、1話の中に何度も同じ構造が繰り返されているように見えてしまう。
そこが、この作品の一番惜しいところだ。

作画こそ悪くなかったが、アニメとしては微妙な感覚が残る作品だった。